制作ノートインデックスメイキング11

秋もすっかり深まってきた10月13・14・15日。
東京都世田谷にあるワオワールドの一室で、「ふるさと-JAPAN」のカッティングが 始まった。
監督以下、演出を担当する飯島さん、編集担当の後藤さん、プロデューサーの 村上さん、制作プロデューサーの石原さんなど、総勢10名のメンバー。3日間に及ぶ、映画完成への終盤の戦いが幕を開けた。

カッティングとは、何人ものアニメーターさんたちが、長い時間と手間をかけて一枚
一枚丁寧に描いてきた、膨大な量の絵を、映画というひとつの流れの中に組み込んでいく仕事。映像の「演出」と「編集」を同時に行っていく作業なのである。
ご存知のとおり、アニメとは、非常に高性能なパラパラマンガだと言ってよい。今は1091カットにおよぶ、それぞれの絵がほぼ描き終わり、それらの絵が初めから終わりまでつなげられて(撮影されて)いる状況である。これを、一つ一つのシーンごとに、全体の流れと合うように、完成品へと「磨いて」いくのである。

写真 全員画面に集中。手前奥が後藤氏、中が飯島氏、手前が村上氏、後ろが西澤監督。

カッティングにおける主役は、なんといっても演出の飯島さんと、編集の後藤さんの 二人。お二人とも経験が豊かだから、たとえば「このシーンはあと1秒伸ばした方が、 余韻が出ますね」などと、絶妙な判断をある種直感的にくだしていく。
もちろん監督がこの作品で伝えたいメッセージや雰囲気を大切にしながら。 この作品の持つテーマや、メッセージ性、監督の真意というものを、二人は正確に理解しているようである。

飯島さんの手にはタイムシートが…

「磨いていく」過程でのチェックはとても厳しい。
まず、人物の動きや仕草などの「演技」が、 ストーリーの流れと合っているかどうか、という「お芝居」のチェック。また、アニメーションという特性上必要なのは、絵に描かれている、 キャラクターの口の動きと、せりふの長さが あっているかどうか、のチェック。さらに、各シーンと、音楽の長さ・タイミングが合っているかどうかのチェックもはずせない。

また今回は、まだ全ての絵が完成した状態というわけではなかったため、ところどころに絵の修正箇所や、色彩の違っているところなども見られた。そのような絵の確かさも、同時にチェックしていった。
映画「ふるさと-JAPAN」は、子どもたちや先生の心のふれあいを描く群像劇である。登場人物が多く、子どもたち同士の会話も多い。彼らの会話の間の取り方、息継ぎのタイミングの合わせ方を調整する作業は、非常に繊細なものであり、集中を要する。

編集の後藤さんは、分厚い台本のセリフのすべてを実際に声に出して、絵と合って いるか確認しながら進めていた。口の動きとセリフの長さを完璧にあわせるためには、 必要不可欠なことだが、とても体力の要ることだ。パートごとに毎回5時間ほどのぶっ続けの作業である。

カッティングに要した時間は、3日間で24時間余り。 休憩時間には「食事よりも目を休めたい」と簡単な食事の後、目を休めていた 後藤さん。その大変さがうかがえる。 童謡を歌う場面では、子供たち全員の口の動きが、歌詞と合っていないとおかしく なってしまう。これも、あらかじめ収録してある歌声を流しながら、すべてのカットで 口の動きとあっているか丁寧に確認し、調整を重ねた。

これで三分の一のタイムシートの量

飯島さんのきらりと光る感性、後藤さんの緻密で素早い編集技術。それを大きな視点から判断する西澤監督。それらは、見ているこちらが思わずためいきをついてしまうほどのプロの技だった。

そして、忘れてはならないのが、 制作プロデューサー、石原さんの存在だ。 飯島さんと後藤さん、二人の出した修正を素早くタイムシートでチェックし、記録する。1秒を24コマに分けたミクロの世界の中で、その背後で全面的なサポートをしていたのが、石原さんとそれを見守る村上さんだった。石原さんには、今回の カッティングの終了後に、修正箇所の確認と指示という膨大な仕事も待っている。

昭和30年代の東京、木場の風景

少しの妥協も許されない精密な作業は、連日深夜にわたって続けられた。
気の遠くなるような、丹念な微調整によって、次第にタイミングが合い、カドがとれ、 監督のイメージが見事に反映された、一つの物語に磨きあげられていく。

構想から約2年。入念な打ち合わせと、一枚一枚丁寧に仕上げられた作画の数々が、このカッティングという作業を通して、ようやく結合し、大きな形となったのである。すべてのタイミング・セリフの長さが合わせられた、約100分間の映像が出来上がった。オーケストラの演奏と、人物の声を入れる作業などを残し、ここで「ふるさと-JAPAN」は7割がた完成したといえる。

磨きあげられた完成作品は、いったいどんな光を放つのだろうか。
監督を始め、制作に携わった人たち全員の思いが込められたこの作品の、完成と 公開が待ち遠しい。
ともあれ、スタッフの皆さん連日連夜本当におつかれさまでした。

<文・写真 西澤真佐栄>