制作ノートインデックスメイキング13

●子どものアフレコ | ●大人のアフレコ

★子どものアフレコ
 

10月30日、日曜の朝9:30ごろから次々とスタッフが新宿のスタジオマウスにやって きた。今日は子どもたち10人と先生役の花村さやかさんのアフレコ(セリフの収録)が 行われる。アニメにとって、このアフレコはキャラクターに命を吹き込む大切な部分。 声が入るとキャラクターが生き生きと動き出す。

スタッフにも緊張が走る中、入念なマイクテストや、画面に写しだす映像のチェックが 行われた。 オーディションによって選ばれた10人の子どもたちは、皆劇団や芸能プロダクションに所属していて、それぞれ芸歴も豊富だが、子どもばかりの収録なので困難も予想される。今日一日の収録で38シーンの収録予定。タイムスケジュールは用意されているが、長時間の現場になりそうだ。

今日の収録では、音響監督の塩屋さんが子どもたちと一緒にスタジオにはいり、各シーンに合わせた細かい演技指導をしてくださる。収録ルームでは、西澤監督と 演出の飯島さん、編集の後藤さんがスタンバイ。飯島さんはキャラクターの口の動きとセリフの長さがずれていないか、また息つぎの場所が合っているかを丁寧に見て いく。

セリフのちょっとした言いまわしや声のトーンなどで作品のできばえはずいぶん違ってくる。それぞれのキャラクターの個性を引き立てながら、監督のイメージに合った作品へと仕上げる作業が始まった。

午前中は、主人公アキラと姉と妹の3人の収録

家の中でのシーンや夕食のシーン、お買い物に行くシーンなどを中心に収録が進められた。

たった一つのセリフでも、難しい。塩屋さんからは、「そこはもっと焦ってる雰囲気を出してみて」とか「がっかりしたな〜という感じを出して読んでみて」と細やかな演技指導が入る。監督も直接、「ちょっと元気がありすぎかな〜、もう少し抑えた声で」「ほら絵を見てみ。顔が笑って いるでしょ、こんな感じでもっといたずらっぽく言ってみて」などとアドバイス。関西弁のセリフ では言葉のアクセントにも注意が払われた。

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主人公アキラの妹れい子役に選ばれた、永嶌花音さんは、若干10歳。最年少だ。 だが、彼女は小さい頃からテレビや映画、舞台でも活躍中で、帝劇での「レ・ミゼラブル」ではリトル・コゼット役をこなしている。今回も愛らしい、無邪気な妹役をなんなく演じてくれた。兄のアキラとコロッケを買いに行くシーンでは、セリフを読むたびに、かわいい〜!と、聞いてるみんなもうれしくなるほど感動。

午後からは、子役が全員集合、スタジオもにぎやかになってきた。
  塩屋さんによるメンバー紹介のあと、早速収録へ〜。

映画「ふるさと-JAPAN」には、子役が10人登場する。アニメで、これだけ大人数の子どもを声優に使うのは珍しい。さらに、子どもたちが4〜5人で会話をするシーンも多い。朝礼のシーンや空き地で遊ぶシーン、また教室の中など、それらの場面は多種多様。それぞれの場面に合わせた会話を展開していく。

子どもたちのアフレコはほんとうに むずかしい。1・2回のテストでOKがでる時もあれば、6・7回とテストを重ねることもあり、スケジュール通りというわけにはいかない。ひとつひとつのシーンは2・3分のものだが、収録には10〜30分、長いものでは1時間に及んだものもあった。
しだいに、塩屋さんの演技指導にも力が入り、子どもたち相手の真剣勝負が続く――

15:00、集中が続く子どもたちの表情にもやや疲れが出てきた。
ちょうどこの頃だ。誰かが気づいた。ゴン役の木村昴くんの声が、「『ドラえもん』のジャイアンの声に似ている…?」「もしかしてジャイアン?」みんな、なんとなく、そうじゃないかな〜と思ってはいたが…そのことで一気に盛り上がる子どもたち。疲れもどこかへ吹き飛んだようだ。確かに木村くんは、この春から「ドラえもん」でジャイアンを演じている。
それにしても、今回の木村くんは、ジャイアンとは違った演技、迫力のある声で心優しいガキ大将のゴンを見事に演じきってくれた。

また、志津役の河口舞華さんは、その声の持つ雰囲気が、監督のイメージにピッタリということでオーデションで選ばれた。
NHKの大河ドラマ「武蔵」にも出演。また「埋もれ木」にも出演していて、演技力には定評がある。
関西からの転校生という設定なので、関西弁を使う場面もあるが、塩屋さんの指導で、関西弁のアクセントも確実に表現して くれた。

ヨシオ役の桑原成吾くんは、ヨシオのキャラクター通り、場の人気者。映画「北の零年」にも出演する演技派だ。監督からの「そのセリフは女の子が関西弁で言うように言ってみて」との難しい要求にも一度で応えてくれた。「そんなことあらへんで〜」と。

最初は緊張気味だった子どもたちも、だんだん慣れてきてムードは和気あいあい。
夕方5時を過ぎたころには冗談も飛び交っていた。
中には、歌をくちずさむ子も。。。
楽しい現場になってきた。

ところで、朝10:00のスタートから最後までずっと参加してくれたのは、アキラ役の 関根直也くん。とにかく長時間。登場シーンもセリフも多く、ほんとうに大変だった。彼は映画「チャーリーとチョコレート工場」でリトル・ウィリーの吹き替えを担当する実力派。
関根くんの持ち味は、淡々とした透明感のある声。「ふるさと-JAPAN」では、真面目で素朴な少年アキラにふさわしく、感情の起伏を抑えた演技が光っていた。

夜8時を過ぎても、疲れも見せずにセリフを読む子どもたち。プロ意識は十分だ。
が、この時間になると監督や塩屋さんからOKが出るたびに“やったー”の歓声があがる。
今日は子どもの収録なので、9時に終了。疲れもみせずに「ありがとうございました!」「さようなら」と礼儀正しいあいさつとともに、元気に帰っていく子どもたちの姿がすがすがしい。
子どもには全員子役を使った今回の「ふるさと-JAPAN」も、楽しい、生き生きとした 映画になりそうだ。

さて、大人のアフレコは明日の予定だが、先生役の花村さやかさんには、子どもたち との会話が多いので、今日きていただいた。午後一番から一緒にスタジオに入っての収録で、子どもたちのアフレコを暖かく見守ってくださる。

最終夜9時からは、花村さんだけの単独収録。劇団民芸の女優さんでその演技力は 素晴らしく、新任教師として赴任してきた先生のういういしい様子や、音楽の先生の 雰囲気を十分に表現しきって、8つのシーンすべてを短時間で録り終えた。

すべてが終了したのは、午後10時半をまわってのこと。 朝10時から子どもたちと一緒にスタジオに入って、ほぼ12時間、ぶっつづけで演技 指導にあたり、ず〜っとしゃべり続けた塩屋さん、また、同じく、昼休みもそこそこに 録音や進行を担当してくれたスタジオマウスのスタッフの皆さんも、長時間本当に お疲れさまでした。

★大人のアフレコ

今日は大人のアフレコの日。13人が 集合して31のシーン全てを収録する。 皆さんベテラン、プロの声優さんなので、画面に映し出される絵の口の動きに、ぴったり合わせたセリフまわしで、収録は朝から順調に進んだ。
塩屋さんも今日は録音ルームに陣取ってのこと、細やかな演技の指導を行った。

さすがに早い。「は〜いテストいきま〜す」とテストを1回、2回。声の調子を整えて、すぐに「ハイ本番へ〜」と入っていく。長いセリフではうまくいった部分を残して、他の部分だけを録り直すという技も使う。

アニメの声優さんはキャラクターの雰囲気に合った声が第一。さらに、それぞれのシーンに合った演技も要求される。キャラクターの人物設定をよく理解し、この人ならこんな時こういう言い方をするだろうと〜〜〜〜。
だから声優さんの役づくりも見事で、主人公のお父さん役の土師さんも、最初は威勢のいい江戸っ子のセリフまわしだったが、監督からの「もう少し、実直な昔気質(かたぎ)の職人さんというイメージを前面に出して演じてください」との要求に一回で応えてくださった。次のテストではもう声の雰囲気がちがう。ちゃんと職人さんになっている。さすがに、映画「ハリーポッター」や舞台で活躍のベテラン。「う〜ん、そうそうこんな感じがいいですね〜」と声が上がった。

学校の職員室のシーンでは、4人の男の先生が会話を交わす。校長先生をはじめそれぞれに違った先生の性格を反映して、見事に演じきってくださり迫力ある出来上がりになった。西澤監督の脚本は声優さん泣かせ 〜〜〜〜〜 セリフが長くブレス(息つぎ)の位置も難しい。

校長先生役の岩田安生さんは、「サザエさん」でも伊佐坂先生を務める名高い声優さん。 「ふるさと-JAPAN」では、重要な長いセリフが多い。テストに入っても「あ〜あ、まちがった!」とNGで大笑い。厳しいけど楽しい収録現場となった。

さて、今日は大人の声優さん方で、子どものガヤ(主人公の背後でガヤガヤとしゃべっている様子)録りも行う。どういう展開になるのかと思っていると、ふだん アニメで子役を担当している女性の声優さんが3・4人出てきて、子どもの声、それも男の子の声をなんとも平然と出してしまった。
中学生の男の子とのケンカのシーンでは、うめき声や痛いときの声も演じてしまう。5歳くらいの女の子が石蹴りをして遊んでいるシーンでは、「けんぱ、けんぱ」とかわいい声も平気だ。
他にも泣いている声や道行く人の何気ない話し声など、声は七変化、プロの素晴らしさに触れた1日だった。

<文・写真 西澤真佐栄>
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