制作ノートインデックスメイキング5具体的な内容
 
 

★現代的な描写はやめよう

主人公の一人である女の子が転校してきてクラスで紹介されるシーンでは、もう一人の主人公アキラが、思わずドキドキして憧れにも似た大きな目で見る絵コンテが描かれていた。 今回全体的に今風の現代的な表情が随所にあり、当時のリアリティを大切にする方針から、修正することになった。 監督からも、「一目ぼれって感じで描かれているけれど。ちょっと違う。また、当時の小学6年生の感覚だと、こんなふうにはならなかった。今みたいに気持ちをストレートには表現しなかったね。 その前にそんな感覚をもたなかったんだよね」とのアドヴァイスで、出会いの場面もさらりと描くことに変更。

★ソフトボールのシーンが加わる

主要な登場人物の関係性をもう少しはっきりさせるためのエピソードとして、ソフトボールのシーンが加わった。 主人公をより目立たせ、クラスのメンバーの特徴もよりはっきりする。 さらに、物語の背景となる昭和31年当時、流行った子どもの遊びや風俗という意味でも子どもたちが大好きだった野球やソフトボールは、いい題材だ。 そういえば、監督は小学生時代ピッチャーで四番打者だったと聞いている。 「あの時代、放課後の校庭や空き地ではなんだかいつもキャッチボールをしたり、人数が集まるとすぐに野球やろうってことになって、よくやってたな」と監督も追加シーンに同意。 今回は、クラスの女の子も参加できるように、野球ではなくてソフトボールでいくことになり、 どこにどんなふうに追加するか、次回までに監督が考えることに。 もちろん、古谷さんもソフトボールの絵コンテを描き、ソフトの場面、43カットが追加された。

★芝居を変更することも

主人公アキラが父の手伝いでリヤカーを引いていく場面の話。
通り沿いの公園、紙芝居がきていて、子どもたちがワーッと歓声をあげて走っていく。
夢中になって紙芝居を見ている中に、妹もいるが、アキラを見つけて「お兄ちゃん、どこ行くの?」とかけよってくる場面だ。ここをちょっと変更することになった。
シナリオでもさらりと表現されているように、この部分は、時代(昭和31年)の様子を語るには大切だが、(当時は、公園や神社に紙芝居のおじさんがやってきて、子どもたちは、喜んで見にいった。少ない娯楽のひとつだった。)物語としては、主要な箇所ではないので、今のカット数を減らしたい。
また、紙芝居を見ている途中で、兄に呼ばれ、見るのをやめてかけよってくるより、ちょうど紙芝居が終わったころにアキラが通りかかり、妹がそれを見つけて走ってくるほうが、自然な動きとして描けるということになった。
そうすることで、絵をいくつか減らすことが可能に。
"紙芝居の前に子どもたちがたくさんいる"絵コンテでも、意味がちがってくる。
"今楽しそうに見ている"から、"紙芝居が終わってみなそろそろ解散しようとしている"へ変更となった。
1枚の絵コンテだけど、これをもとにした、その前後のキャラクターの動きは変わってくるのである。
実際の作画では、そのあたりを飯島さんが指示。まさしく、それぞれの演技を細かくきめていく演出の仕事になる。

★カメラをどこまで引くか・・・・

実写映画の場合、俳優さんの演技をカメラで追いかけ映画のフィルムを作っていく。
アニメでも原理は同じこと。登場するキャラクターをその背景とともに動かし、絵に描いていく。
アニメ制作の過程でもカメラワークという言葉がよく出てくるが、これは、キャラクターや背景をどの角度から見た風景として描くかという意味で、これが決まっていないと動きや絵が決まらない。
どの位置にカメラを置いて見るか、その時カメラをズームアップしてキャラクターの顔のアップを描くのか、逆にカメラをう〜んと引いて(ズームバック)キャラクターとその背景すべてを描くのか、シーンごとにまたカットごとに一番効果的な描き方のカメラ位置をも決めていく。
次にカメラをどちらに動かしてどの方向から見た様子を描くかなど、当たり前のように見ているアニメの動きにも、その裏にはみんなのアイディアがいっぱい隠されている。
今回は、終戦後東京の下町が復興していく場面で、古谷さんの絵コンテに、監督から「ビルが高すぎかな、この頃はまだ3.4階程度の高さだったから。
立ち並ぶ家もこんなに密集してなかったです」との指摘があった。
ビルが建っていく場面をどこから見た風景として描くか、が、カメラワークの問題になる。
あまり遠くから見た風景を描こうとすると、ものすごく大きな細かい背景が要求される。
工藤さんからも「これは背景画としてはき・び・し・い(笑)。大変だなって。」との感想がだされた。
家族で夕食時に会話をするシーンでは、ちゃぶ台を囲んで登場人物が5人だったり、2人だったり、中には、1人がアップでセリフをしゃべったり、たくさんの工夫が隠されている。

最初の絵コンテからの修正は、約20から30ヶ所にのぼった。物語をよりよくするための判断だ。
「ふるさと-JAPAN」は何人もの小学生が登場する。朝礼での並び順もチェックポイント。これだって背の順にするか、名前の五十音順にするか、セリフのやりとりに矛盾がでないようにしなければならない。
教室内の席も同じ。セリフを言って振り向いたら、答える相手がいないと困ってしまう。
「ところで、アキラの家の居間は何畳間にします?」と工藤さんから質問が。「6畳間にちゃぶ台があってというイメージだと思いますが、アニメでは6畳間は難しいし、ほとんど使わないんです」一部屋に描く人物が寄りすぎてしまって、見ていて息苦しくなるという。
結局8畳間に決定。それにあわせて、ちゃぶ台の大きさや部屋にある鏡台や仏壇といったレイアウトが決まっていった。

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<文・写真 西澤真佐栄>